役割を終えたあとに残った、思いがけない空白
母として、嫁としての役割を終えたこと、
それは同時に、これまで重ねてきた
我慢の終わりでもありました。
ようやく、自分の気持ちに向き合う機会を得たのです。
けれど、私は何をしたいのかが見えてきませんでした。
これまであった役割や、誰かの言う常識は、
私を縛ってきたと同時に、私の支えでもあったのです。
ほっとした安堵とともに、
何者でもない自分と向き合うことになりました。
なおも遠のく本当の自分
欠けてしまった自分自身と、
生活の基盤を立て直すために、
私は、アルバイトを始めました。
50代半ばで見つけた仕事は、
ホテルレストランの洗い場でした。
朝食ビュッフェや、結婚式での
大量の食器洗いは、体力を使います。
でもそれ以上に、辛かったことがありました。
若いシェフの近くで調理器具を洗っていたら、
すすぎの鍋に、ソースのついたスプーンを、
投げ入れられたり、
ホールの人たちのお皿からこぼれた、
床の汚れを掃除したり、
下ばかりを見つめる仕事だったことです。
誰かのための役割を終えて、
自分を見つめ直そうと始めた仕事は、
口をつむいで、うつむいて、
黙々と大量の洗い物をし続けるものでした。
自分を取り戻すために始めた仕事でしたが、
皮肉にも、本当の自分から私自身をさらに遠ざけてしました。
やっと本当の自分に向けられた問い
それでも、経済的な余裕が少しずつ出てきたので、
カルチャーセンターにはどんなものがあるのか、
調べてみました。
「私は何がしたいの?」
これは、私が自分自身に、
やっと問うことのできた質問でした。
新しい人生を始めたかったのではなく、
本当の自分でありたいという思いからの問いでした。
そこでバレエ教室が目に止まりました。
ただ残念なことに、ベイビークラスなのでした。
幼い頃からバレエに憧れていました。
でもバレエは子どもの頃から習うものという、
「常識」が私の中にあり、始めることを躊躇していました。
「ないなら仕方ない」
いつもなら、こう割り切って、
普段通りの日常に戻るところでした。
「でも、私はバレエが好き」
幼い頃から、幾度となく心に浮かぶ夢でした。
「もう遅い、恥ずかしい、今さら何になる。
時間の無駄、無駄遣い、他に選択肢はないのか。」
これまで、こんな言葉に従ってきました。
私は、55歳。
今さらだけど、あえて遅いけれど、恥ずかしいけれど、
時間と、お金の無駄遣いをすることを選択しました。
「バレエ教室を探して、バレエを習おう。」
これまでの忍耐が、そっと背中を押してくたのでした。
今の自分の心に正直になること。
それが、私のイマ活でした。



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